96.日本のゼネコンの弱さはどこにあるか
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 3/3(水) 21:41:22  返信も含め全削除

1.技術者による原価管理に限界が
 建設業界の原価管理が技術者によって行われている点に大きな課題がある。技術的管理である品質管理や工程管理等であれば技術者の専門であるから適切に行われるが、原価管理については経営管理の一部であるため素人の技能者では無理がある。精々決められた実行予算制度を目安として予算消化する程度となってしまうのである。繰りかえし記述するが実行予算は原価管理としての道具ではなく、予算消化の道具である。したがって本物の原価管理を知らない経営者や技術者が理解できないのは無理もない。原価は掛かるものではなく積極的に管理するものである。技術者がよく発言する「掛かるものは掛かるんだ」と言う言葉は原価管理を理解していないことを現している。

2.原価はコントロールするもの
 原価について誤解している経営者や技術者には無理なのであろうが、原価は自在にコントロールする術があることを知らなければならない。他の製造業のようなコストコントローラ意識が建設業界の技術者には欠如している。原価とは単価と数量を乗じた金額をいうが、建設業界の技能者は単価に重点を置き過ぎている。したがって建材の単価や下請の単価、作業員の賃率(単価)ばかりに気を取られ、コストダウンとは、単価の切り下げと勘違いしている。これに対して他の製造業のコストコントローラであれば、材料の数量に無駄がないかの管理に重点を置いている。また、下請管理についても施工時間(時間は数量の一種)の管理に力点をおき、現場作業員についても賃金の賃率(1時間当たりの単価)ではなく、総延べ作業時間(1人当りの作業時間×作業員の人数)の管理に重点を置いている。建設業の現場技術者と製造業のコストコントローラは目の付け所が違うのである。コストコントローラは生産性向上による施工時間短縮が目標となっており、この生産性向上の時間管理が原価管理である。この時間管理によって原価を作り上げるという意識が強いが、建設業界の技術者は「掛かるものは掛かるんだから仕方がない」という意識の技術者は製造業にはいない。もし建設業界のような技術者が作れば世界市場で勝てるはずがない。市場経済とは恐ろしいほど競争原理が作用するからである。

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