173.実際原価計算の戦略的影響
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 9/14(水) 07:47:29  返信も含め全削除

1.法定償却法が決められた理由
 減価償却費の計算方法については、個人企業は定額法の計算が原則であり、法人企業では定率法が原則となっているが、これは前に述べたように原則規定であって、申告さえすれば自由に他の手法の選択も認められている。定額法は耐用年数の期間中は、減価償却費の額が毎年同額となるため定額法という名がついている。これに対して定率法は、償却率を一定化させ未償却残高に償却率を乗じて計算するから、当初の計算額より次年度以降の償却費は逓減していく計算法である。法人企業が定率法による償却法が法定償却法となっている理由は、初年度の減価償却費の額が多くなるため、初年度の租税負担額が軽減される結果となる。そのため次年度以降の税額は逓増する結果となる。耐用年数終了時で全期間の減価償却費の額は、定率法と定額法は同額になるが、初期の段階で租税が逓減された方が、納税者にとって税金の繰延部分の金利分が有利となる。これが法人企業に対する定率法を原則化した理由である。これに対して個人企業の定額法が原則化された理由は、減価償却費を全期間を平準化することによって、毎年の所得(利益)を平準化させた方が、超過累進課税による租税の計算方法が、納税者に定額法が有利に作用するためである。

2・法定耐用年数が規定された理由と経営戦略
 減価償却費の計算は、定額法、定率法の採用によって大きく相違が出るが、更に、耐用年数の判定によっても大きく変動する。そのため耐用年数を各企業に任せると、減価償却費の計算がバラついてしまい税の公平負担が行われない。そのため全国の平均化された使用可能年数を基本に耐用年数を法定化したのである。しかしこの法定耐用年数は、減価償却費の最高額を規定したものであって、仮に法定耐用年数が5年ものであっても、企業側が税金の計算とは別に経営戦略として、10年使用することを目標に掲げ、原価の軽減を図ることは自由である。実際に法定耐用年数が過ぎてから継続して重機等を使用している企業も多く、減価償却費という原価が発生しないのに稼動するため大きな利益を上げている企業はその例である。

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