新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 5/10(水) 06:42:50
返信も含め全削除
1.何故、コストダウンが材料費に集中するか
コストダウンに関連して昔からよく耳にする言葉がある。鉄筋の量を減らすことや骨材の質を落とすことで、原価を下げるという行為である。それほど建設業界では手抜き工事が多かったのかもしれない。建設業者が安易にコストダウンをする方法として思いついたのであろう。更に手抜き工事と並んで多い行為は、建材店に対して価格を脅迫的に下げさせる方法もよく耳にする行為である。いずれもコストダウンについての行為が、材料に関して集中的に行われる特色がある。そのため建材店叩きという言葉までが存在する。何故これほどまでに材料に集中するのであろうか。その理由は、高度成長期前の物不足時代の価値観に関係している。高度成長期前は物不足時代であったから、当然、物(材料)が高価であったため、工事原価に占める割合が労務費等に比較して材料費の割合が高く、コストダウンのための行為が材料費に集中する結果となったのである。
2.物不足時代は物(材料費)が高価で賃金は低い
中国が高度成長期に入る前のことであるが、過去の日本の高度成長期前の現象と同じことが起きていた。ある自動車メーカーの経営指導をした時に、コストダウンに関する相談があった。その相談内容は如何にして部品等の材料を下げるかの方法を教えて欲しいという要望であった。その時に工場原価の中身を詳細に調べて驚いた。それは工場原価の70%以上が材料費であり、設備等の償却費や管理費、労務費を合わせても30%に満たないのである。中でも労務費は工場原価の数%に過ぎないのである。これでは、労働生産性を上げて労務費の削減を図っても、人件費が極端に安い時代であったから、労務費の微減では全体のコストダウンには貢献しないのである。そのため、コストダウンの意識が材料費に集中するのである。日本も高度成長期前までの現状は、中国とまったく同じ状態の時代があったことを思い出した。その後は、日本、中国共に人件費が高騰したことは周知のとおりであり、原価に占める材料費と労務費のウエイトが逆転し、材料費の縮減より労務費等の縮減が重要な課題となったのである。
|