207.コストダウンを手抜き工事と誤解する背景
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 5/17(水) 16:10:27  返信も含め全削除

1.物不足時代の残骸を引きずる価値観
 コストダウンの話をすると、そんな手抜き工事はできないと反論する建設業者がいる。前述したようにコストダウンの行為が材料費に集中していた時代背景にその理由がある。高度成長期前までは物不足時代であり、物(材料)が高かった時代であった。そのため物を大事にする教育が徹底され、国民全員が物を大事にする時代であった。例えば、食卓テーブルや勉強机に腰をかけることなど、罰が当たるという教育を受けたものである。当時は物を大事にするあまり、テーブルや机等すべての物に神が宿り、腰をかけると罰が当たるという気分になったものである。このように物不足時代には物自体が大切なものであり、物としての材料も高価で原価構成も金額的ウエイトが高く、そのためコストダウンが材料費に集中する結果となっていた。高度成長期に入る前までは、このような価値観が当たり前であった。そのため、コストダウンは材料費を切りつめることになり、材質を落とすことや材料の数量を減らすことが一般化し、手抜き工事のイメージにつながり、今日までそのイメージの残骸が残ってしまった。

2.労働にウエイトをかける価値観が必要な時代
 材料が高価で原価のウエイトが高かった時代で、相対的に労賃が安く労務費が金額的に負担観の少なかった時代には、合理化により労働生産性を高めても労務費等の加工費を下げても、大きなコストダウンは望めなかった。しかし、近年の日本の人件費は世界最高レベルまでなっており、材料費と労務費等の原価構成が逆転してしまったのである。そのため近代施工管理の思想も大きく変化し、原価管理の思想が材料費の削減手法から、労務費等の役務の縮減が中心になってきたのである。労務費等の役務は時間に比例して発生するもので、作業に対する労務費や建設機械のレンタル料、仮設材のレンタル料、電力料等の役務は時間によって発生するため、施工の効率化による時間の縮減が原価管理の中心となってきたのである。実行予算による金額管理が機能しない理由は、時間によって発生する役務の管理を、金額管理では機能しないことを認識しなければならない。

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