新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 5/24(水) 07:02:09
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1.採算計算を実行予算に求めることはできない
建設業の経営者にとって、受注した工事が予定された利益を確保することができるか、或いは赤字工事になるかを判定するため、採算計算は経営判断の資料として重要な計算である。つまり受注した工事の採算を判定するための計算である。この採算計算は受注した金額と実際に発生した総原価とを比較して算定するものであるから、発注者との関係で発生したすべての費用を集計する必要がある。営業上発生した交際費や打合せ等に関する全ての費用も発注者別に集計する。これを営業費計算といい発注者別に営業費の原価計算をするものである。この発注者別営業費に現場で実際に発生した工事原価に加えたものが、発注者別総原価であり、この総原価と請負金額との対比することが発注者別に採算情況を判定することが目的である。建設業者が採算計算の思想で実行予算制度を考えている建設業者がいるが、これは採算計算の目的と原価管理の目的を混同しているのであって、予算管理技術を誤解し混乱しているだけである。
2.実行予算の課題
実行予算は、原価を金額で管理する道具であるから、金額予算で原価を誘導できるものには機能する。例えば、現場交際費の予算を確定して、この金額を越えてはいけないと指示すれば管理可能である。しかし、工事原価の大部分は金額による予算管理ができない特性を持っている。例として建設機械のレンタル料や仮設材のレンタル料を想定すれば分かるが、予算管理ができない原価である。現場で発生する事故や施工ミス、自然災害、施工調整等各種の事情で工期が変動する。この工期に連動して発生する工事原価が近年の建設現場の特色である。いくら工種別に予算を厳しく見積もっても、工事原価の発生要因が時間で発生するため、金額による予算管理で原価縮減を誘導できないのである。専門工事業者と金額予算で契約しても、元請の時間管理が十分にできない不適格な管理技術者がいれば、専門工事業者の時間比例費の増加で採算割れが生じてしまう。この経験上専門工事業者の対抗策は、不適切な時間管理の費用まで見込まなければならない。
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