新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 09/7/15(水) 20:44:28
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1.実行予算という名称の魔力
建設業界に定着している実行予算という制度は、建設業界にとっては威力のあるものとして使われている。それは原価縮減のための道具として、大きな効果を発揮しているという意味であろう。実行予算制度は、他の業界では一般的に予算管理と言われており、建設業界以外では「実行」という文字を付加して使うことがない。単に予算書(表)という表現で使われている。通常は目標としての予算計画を立て、その計画に近づけようと努力する予算管理のことであるが、その予算管理に「実行」という名称を付加しただけで、予算に対するイメージが大きく変わってしまう。予算という機能は同じであるのに、「実行」という文字が付加されただけで、実行可能な現実的な予算管理システムというイメージが演出される。実行予算とは不思議な響きを持った言葉である。しかし、この実行予算の響きに惑わされてはいけない。見方によっては建設業界の原価管理の近代化を遅らせた不幸な要因になっているからである。
2.実行予算の魔力から抜け出せるか
建設業界における実行予算が、原価管理の道具として本格的に機能しているのであれば、実行予算制度を利用してコスト縮減の貢献度合いが科学的に明確に証明されなければならない。実行予算制度でも僅かな効果はあるかもしれない。実行予算という名称は、あたかも実行可能であるとする印象を与えている。その点でネーミングだけは素晴らしいと言わざるを得ないが、実行予算という原価管理の技術は、コスト縮減にそれほど機能する道具ではない。ネーミングが持つ魔物に引きずられ魔力の虜になっているだけである。ここに実行予算の名称から受ける大きな勘違いが潜んでいるのである。
3.実行予算の魔力から抜け出し近代化を
原価管理の近代化を進めるにあたり、江戸時代から続いてきた実行予算の魔力から簡単に抜け出すことはできない。これほどまでに頑固に定着した魔力の根源を究明しなければならない。それには原価管理の近代的管理手法の研究の前に、実行予算制度の問題点を深く解明し、実行予算制度が原価管理に対して機能不全であることを納得してもらわなければならないのである。つまり実行予算の魔力を払い除けるための研究が必要なのである。
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