新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 6/23(日) 01:08:28
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1.「実行予算は社内請負制度が始まり」
日本の建設業界は、古くから原価管理について社内請負管理方式を採用してきた。現場管理には、本社集中管理方式と現場分散管理方式がある。近年IT化が進む中で本社集中管理方式が多くなったが、現場分散管理方式の一種である社内請負管理方式も、いぜんとして根強く利用されている。社内請負管理方式は、企業における原価管理手段として社内請負制度が発達したのである。企業(経営者)が一定の利益を確保し、社内の現場責任者(通常は現場代理人)に一定の金額を提示して請け負わせる制度である。この制度の特色は、外部の下請企業と同様の関係を作り上げる方式である。外見的には分からないが、現在でもかなりの企業で用いられており、一定の成果を上げている。この制度の発展形態として、現場代理人等が企業から独立して下請企業となり、今日の建設業界重層化の構造が出来上がったのである。
(1) 社内請負制度の利点
社内請負制度の利点は、社内で請け負った現場代理人等の責任者が、自分の努力による利得がすべて自分に帰属するため、経営者の意識で真剣に現場を管理することである。自分の意志で施工効率を上げ、常に利益を最大限にしようとする意思が作用することである。その点で企業も一定の利益を確保できるし、現場責任者も利益を最大限に享受できる点で、双方の利害が一致し、今日まで引き継がれている制度である。
(2) 社内請負制度の欠点
@欠点の第1として、社内請負制度はある限度までは機能するのであるが、社内の人事管理等に課題が多く、優秀な人材ほど独立するため、企業との結びつきが希薄化するのである。企業との良い関係を持続させるためには、一般的な人事管理より難しい管理が要求されるのである。この点で多くの失敗事例が見られるのである。
A欠点の第2として、工事管理(品質管理・工程管理・原価管理・安全管理)が、すべて現場責任者に完全に任されるため、企業に何ら工事管理技術の蓄積がされない。そのため現場責任者が退職すると企業には工事施工能力が全くなく、抜け殻のような企業であることに気がつくのである。少なくとも建設業としての企業であれば、一定の施工能力であるノウハウが在庫していなければならないし、建設業として企業継続が成立しないのである。
2.日本の実行予算制度の大欠陥
日本の建設業の特色は、上記の社内請負制度の思想を引きずりながら、名称だけを実行予算制度と変えただけに過ぎないのである。名称は実行予算制度として見かけはいいが、実質的には古き時代の社内請負制度そのものであり、特に思想がお粗末である。
実行予算制度の課題は、前回の「講座内容等の案内」で記述したとおり、計画経済の国で実施されていた予算消化のための道具が実行予算制度であり、日本の社会主義的時代に導入された制度である。厳しい市場経済時代には機能しないことを忘れてはならない。実行予算は計画経済時代の予算管理の思想であるから、予算という金額の配分が目的であって原価管理の道具として機能しないことである。この予算配分思想が原価管理の落し穴となっており、到底市場経済に通用するものではない。<次回は「原価管理の落し穴」がテーマです。>(阿座上洋吉)
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