新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 7/15(月) 21:30:48
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前回の「数量管理の妙味」について多くの会員の方からお電話をいただいた。そのため「パート2」を書く必要性が出てきたのでである。原価の魔術に気がついた方が増えることは楽しいことである。面白いことに数量(時間も含む)の重要性を書いたつもりが、会員の方々は、単価の変化による妙味を感じた方が多かったことである。まさしくそのとおりである。
1.営業のための原価計算
営業のための原価計算は、発注者が納得させるための原価計算であるが、通常は、坪単価等のどんぶり勘定が一般化している。面積や体積等の数量に「どんぶり」単価を乗ずるのである。建設業界がなぜこの幼稚な原価計算を今日まで続けてきたのであろうか。客の立場から見ると怪しい業界だが、他にないので諦めたのかもしれない。私は、建設業界を非難しているのではない。チャンスの話をしているのである。この不景気の中で元気のいい建設業者は、客から怪しい業界であることを逆手にとって大成功しているからである。怪しい業界から信頼される企業にするだけであり、原理は簡単で単純明解である。その第一歩は営業上の原価計算であっても「どんぶり」勘定を止めるべきである。
2.採算計算の原価計算
建設業者の一般的な原価計算の目的が、採算計算的思考が強すぎるのである。受注した現場の採算を合わせるための考えは当然だが、採算計算の思想では原価管理の思想とは違うのである。ある特定客に関連する借入金の利息は採算計算では広義の原価へ入れる。なぜなら、客からの支払が延期された場合に当方で銀行に支払う金利は、採算に関係するからである。しかし、この金利は施工行為に関係がない費用であり、原価計算の対象外なのである。このように採算計算には該当するが、原価計算には該当しない費用が他に無数にあることを留意すべきである。原価概念の重要性を理解すべきである。
3.原価管理の原価計算
原価管理は、採算計算より科学的で次元が高いのである。工種ごとに最適コストを追求する行為であって、採算が合わない工事であっても最適コスト管理に挑戦する社会科学のシステム研究から生まれたものである。そこには営業計算や採算計算の甘さはない。厳しい社会科学の追及があるのである。市場経済では欠かせない科学である。
4.原価管理と数量管理の妙味
数量管理の妙味は、原価管理の中で起きる現象である。前回の事例の労務費は金額管理においては、どちらの現場も\750,000であるが、現場ごとの実際発生原価を把握する目的であれば、下記の計算方式で満足できるであろう。
1号現場のA作業労務費\750,000(時間当りの賃金\750×作業時間1,000)
2号現場のA作業労務費\750,000(時間当りの賃金\500×作業時間1,500)
上記の計算では両現場の作業能力の測定は想定していないのである。上記の事例で作業員の技量が同一であるとすると。平均単価を算出「(\750+\500)÷2=\625」し、これに作業時間を乗して計算すると下記のようになる。
1号現場の作業時間1,000×平均賃率\625=\625,000・・・・・1号現場の労務費
2号現場の作業時間1,500×平均賃率\625=\937,500・・・・・2号現場の労務費
2号労務費937,500−1号労務費625,500=312,500・・・・・・両現場の能力差異
なぜ数量判定が原価管理に重要であるかは、単価の変動を混在化させると能力判定が適切に実行できないことが分かる。現場の努力判定ができなくなるのである。(阿座上洋吉)
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