新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 8/25(日) 14:55:44
返信も含め全削除
1.施工待機状態の施工許容量と費用
建設業は施工現場が存在しない場合であっても現場に関連する費用が多く発生する。将来の受注に対して受注待機状態でも費用が発生するのである。発注者が安心して発注できる建設業者は、施工待機状態でも一定の施工能力とその許容力を持っていることが建設業成立の要件である。このように建設業は一定の施工受入余力状態を強いられる業界である。これを施工待機状態の施工許容量という。建設企業の施工能力は、受注前の施工待機状態でどれだけの施工許容量をもっているかで建設業の規模が決まるのである。もし受注前に施工待機状態に余力がなければ、この状態では新しい受注は不能となるのである。この点で待機状態の施工許容量を維持するために発生する費用が必ず存在するのである。
しかし待機状態で発生する費用の取扱については、建設業界で必ずしも一様な処理方法がないのである。この点が建設業界の原価計算の悩みであり、原価計算は難問が山積みされており何ひとつ解決していない。それでも建設業界では原価計算が行われ利用されている。これは昔から「気違に刃物」ということわざどおり、気違いに刃物を持たせると恐ろしい事件が発生する。原価計算とはそれほど恐ろしい凶器になりかねないことを関係者は留意しなければならない。ぜひ、原価計算は勉強をしてから高度の道具を有効に使っていただきたい。
2.待機許容原価の内容
受注前に発生する施工待機状態の費用で、自社企業の一定の施工能力をもった状態で発生する費用を「待機許容原価」といい、次のような費用が発生する。
a.技術者の人件費(給料・法定福利費・福利厚生費・退職給与引当額等)
b.施工機械費等(機械減価償却費・修繕維持費・固定資産税・駐機場地代家賃等)
c.その他(現場待機状態で発生する固定費)
「どんぶり」の大きさ(u等)×自社予定単価(基準単価等)=実行予算金額
待機許容原価は、施工現場が存在していない状況でも発生する固定費である。繰り返しになるが実行予算制度は、上記の固定費等多くの課題を未解決のままであり、一般的原価計算の視点でみると無謀な原価計算手法である。固定費をいかに原価計算に組込むか、企業によって異なっているが、この点が建設業の原価計算制度近代化の研究テーマでもある。
3.固定費の配賦単価の計算
固定費の配賦単価(予定配賦単価)を算定するに当たっても多くの課題を抱えている。発注者から工事を受注し、いよいよ現場が施工開始する場合に上記の人件費や機械費等、その他の固定費を現場へ配賦しなければならない。この場合、配賦単価(予定配賦単価)を算定するには、下記の計算を先行させなければならない。
年間技術者人件費÷年間予定稼働時間=予定配賦単価(予定配賦率という)
機械費等発生額÷年間予定稼動時間=予定配賦単価
その他の固定費計算も動揺の計算をする。
予定配賦単価の計算は、実現最大稼働時間や平均稼働時間、実態に則した実際予想稼働時間等各種の事前時間の概念が必要となる。しかし、この各種年間予定稼働時間には大きな差異があり、どの予定稼働時間を採用するかによって予定配賦単価が大きく変動する。しかし各社がどの予定稼働時間を採用するかは自由であり、いずれも実務上認められた時間の観念である。しかし、予定稼働単価のとり方による変化は、実行予算の金額管理にも大きな影響を与えるのである。その影響の恐ろしさを関係者はご存知であろうか。
|