新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 9/3(火) 12:34:12
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原価計算は職種や立場、原価計算の利用目的によって原価内容や計算手法が大きく変化するため、各種の立場で原価計算がどのように変化するか、またその利用目的が変わることによってどのように原価の内容や、計算手法が変化するかを検討する。
1.経営者は原価計算に何を求めるか
(1)経営者は採算計算を期待する
経営者の立場で求める原価計算の狙いは、現場ごとの採算状況を捉えたいという意識で原価計算を考える。経営者としては当然のことであり、受注した現場について採算が取れるかどうかは重大な関心ごとである。この経営者の狙いの原価計算を採算計算という。対象とした現場に関連して発生する原価全ての費用を正確に把握することがポイントとなる。したがって、現場で発生する工事原価の他に、当該現場に特定して発生する営業活動の費用や、工事契約に関連して発生する費用も対象となる。更に、請負代金に関連して発生する保証料や代金回収に関連する支払利息等の金融費用も算入する。このように該当する現場に関連して発生した費用のすべてを集計し、対象となる請負金額と対比することによって当該現場の採算を算定することが原価計算の目的と考える。
(2)採算計算が原価管理にならない理由
採算計算が原価管理に利用できない理由がある。営業活動によって発生する費用は、仮に特定の現場で発生する金額が確定することができたとしても、その費用は不特定多数の営業活動の一部であると考えることが一般的であり、販売費及び一般管理費の性質である。また契約等に関連して発生する費用も現場活動に関係がない費用であって、採算計算の対象にはなるが現場活動ではないから原価管理の対象になるのは当然である。次に請負代金に関連して発生する保証料や支払利息の金融費用も、現場の施工上に関連して発生費用ではないから現場の視点で見れば不純物であり、金融費用は原価管理の対象になる費用ではなく営業外費用として処理される。
2.経理が担当する原価計算の目的
(1)経理上の原価計算は制度会計の縛り
経理担当者は、建設業会計としての制度会計に一致することが要求される。例え特定の工事に関連した費用であっても、上述のごとく営業活動で発生する費用は販売費及び一般管理費で処理され、工事原価として処理されることは間違いであると判定される。また、当該工事について発生した保証料や支払利息であっても、金融費用は営業外費用として処理することが会計学の通説となっている。原価計算制度における原価は、原価に算入される概念にに一致したものだけが要求され表示区分は、原価の4要素としての材料費、労務費、外注費及び経費に分類され表示される。
(2)技術的原価項目との噛み合いが悪い
経理的分類は、原価の4要素としての材料費、労務費、外注費及び経費に分類されるが、現場で利用される原価計算の区分形式は、A工事、B工事、C工事・・・等の工種別な技術的分類であり,経理的分類と馴染まない面をもっている。
次回はこの続きとなります。(阿座上洋吉)
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