新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 9/15(日) 12:08:28
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1.費用は時系列的に発生するもの
ある特定の工事について発生する全ての費用を集計する場合、費用の発生を時系列に確認すると、施工原価以外に販売促進の段階から工事完成後のアフターサービスの間でも費用は発生す。これらの費用は原価計算の目的や立場によって、@経営者視点の採算計算が目的なのか。A経理担当者の立場で実際原価計算が目的であるか。B現場担当者の立場で原価管理が目的であるかによって大きく相違する。経営者の立場で採算計算を目的とすれば販売促進費も原価と考える。しかし、販売促進の段階で発生する費用は、受注に結びつくか分からない状態の費用もあるし、工事完成後のアフター費用にしても手直し工事費ばかりではなく、最終入金までに関連して発生する金利まで関係する。
2.時系列的に発生する費用
(1) 不特定多数に対する販売促進費の認識
一般的な販売促進費は、新聞、テレビ、雑誌等の広告宣伝費や、カレンダー、手帳、扇子等の小額広報活動費等は、不特定多数に対する広報活動費であり、例え後日受注に結び付いたとしても原価計算の対象にすることに無理があり、通常は原価計算の対象外である。
(2) 特定相手に対する販売促進費の認識
特定相手が決まり、交際接待費が意識的に投資され始める場合の費用は、特定相手との損益計算が狙いであるから、経営者は採算計算の対象とすることは当然である。しかし、財務会計上は販売活動の費用として認識され、現場の施工活動に何ら関係ない費用であり、工事原価として認識されることはない。
(3) 成約時に発生する費用と原価認識
成約時に発生する費用は、完全に取引相手が特定できる費用であるから、採算計算の対象になることは当然であるが、この段階の費用は販売行為で発生する費用であり、財務会計上は販売費として処理され、施工に関係ない行為として工事原価とは認識しない。
(4) 契約時に発生する費用と原価認識
法律行為としての工事請負契約時に発生する費用も、(3)の成約時の視点と同様の性質をもっており、採算計算上は原価の対象となり、財務会計上は販売行為から発生するものとして販売費で処理し、工事原価の対象とはしないのが通説であるが、実務家は実際原価へ算入することが多い。原価管理が目的の場合は、現場の施工で発生する費用でないことは明らかであり、工事原価の対象外となるのである。
<注意> 公共工事の工事契約により前受金を受け取る時点で発生する保証料に、各種の論議がある。保証料には工事原価説と金融費用説である。工事原価説は、採算計算を重視した思想で、取引相手が特定されているため算入する。財務会計上では金融費用であり、発注者より前受金を貰わず銀行より借入れた場合の支払利息と同格で、金融費用は営業外費用で処理することが通説である。前受金、借入金等に頼らず自己資金で施工した場合、自己資本には広義の金融費用である配当が発生する。極論すれば支払配当金まで工事原価?と言うことになり、保証料等の金融費用を工事原価へ算入することは論理的に無理がある。(阿座上洋吉)<次回へ続く>
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