新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 9/22(日) 16:14:16
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<前回の続き>
前回の解説で記述したように、発生した費用が特定の発注者に関連して発生した費用であっても、その費用が発注者に所属すると言う理由で原価と考えてはいけない。特定の発注者について発生する費用は、販売行為(交際接待費等)で発生する費用であるか、現場の施工上で発生する費用であるか、金融行為によって発生する費用(前受行為の保証料・借入行為の支払利息等)であるかを明確にしなければならない。販売行為の費用は販売費及び一般管理費で処理され、金融行為で発生する費用は営業外費用で処理されなければいけない。したがって、現場の施工行為によって発生する費用のみが、工事原価として認識されるのである。
(5) 現場の施工行為で発生する原価の認識
現場の施工に関連して発生する費用は、すべてを工事原価として認識しなければならない。その工事原価は、施工前の準備段階で発生する段取費用と、本体工事から発生する工事原価に分類することができる。
@ 施工準備費用の原価意識
施工前の準備段階で発生する費用は、施工準備費用であっても施工に深く関連して発生する費用であるから、当然工事原価として認識しなければならない。しかし工事原価としては認識することに異論はないが、原価管理の視点ではいくつかの問題がある。現場の管理下のもとで発生する準備費用と、本社の管理下のもとで発生する準備費用があり、費用の性格に相違する点がある。財務会計上は、双方の準備費用は実際発生原価として工事台帳や原価計算表に集計される。しかし原価管理を目的とした場合の原価計算では、本社で発生した準備費用の中で本社の裁量で配分する準備費用当は、原価管理の対象とはすべきでない原価である。何故なら現場担当者の立場で管理不能の費用であって、現場施工者の責任ではないからである。本社の予算管理上の責任問題である。
A 原価管理上の原価認識の視点
このように原価計算は目的によって原価概念が相違する。原価計算の目的に合わせて原価を検討する必要がある。原価管理は、採算計算や財務会計上の原価計算と目的が相違しており、原価の管理に特化しなければ道具としては機能しないものである。原価管理の原価概念が一番狭義の原価の概念で厳格に認識する必要がある。次に財務会計の原価計算の概念があり、経営者が求める採算計算の原価の概念が一番広義の概念である。
B 原価管理の原価認識の具体例
原価管理を対象とする原価の概念は、現場管理者の裁量によって変化する管理可能な原価をいうのである。A工事の事例として検討しても各種の問題が考えられる。A工事の作業を自社雇用の作業員によって施工する場合が、典型的な原価管理の対象となるのであるが、A工事を下請業者へ外注した場合は、下請契約した段階でA工事の原価が契約によって確定してしまうため、原価管理の対象にはならなくなる。それは原価管理の裁量権が下請に委譲されるからである。そこで下請契約の段階に原価確定のチャンスを利用して原価管理をしようとするのである。契約により確定すれば、施工の時点で原価計算の対象となり工事台帳の記入で原価計算が修了する。しかし、下請が担当するA工事の施工中は、コストを引き下げるための管理行為ができなくなるのであるが、この点についての下請管理は後日詳解する。(阿座上洋吉)<次回へ続く>
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