新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 9/29(日) 23:52:01
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<前回の続き>
C 原価管理としての原価項目の再検討
原価計算において原価を認識することが第一の重要なポイントであるが、原価管理の視点で見ると第二のポイントが重要となる。それは原価であっても自社でコントロールできるか、コントロールできない原価であるかの二分割が重要となる。原価計算は目的によって原価項目の扱いが大きく相違する。もし原価管理の対象に成らない原価が混入すると原価管理の道具が劣化してしまうのである。現場の施工上で発生した工事原価であっても、現場の工事管理で誘導不能な原価は、原価管理の対象外で処理することが重要で、徹底的に原価管理の項目だけを吟味することが必要である。
D 外注工事費は管理可能か
前回で記述した事例の特定工事(A工事)を自社所属の作業員によって施工する場合、労務費予算\500,000は、管理可能な原価管理の対象となる原価である。このA工事費\500,000を下請企業に外注した場合は、自社企業の原価管理から離れ、下請企業の原価管理下に置かれてしまう。そのため外注した工事費は原価管理の対象にすることが難しくなる。そこで元請はA工事を外注工事の契約時点で\500,000よりできるだけ下請企業と低い金額で契約をするように努力し、この時点が元下企業の攻防となり、外注費の原価管理はこの時点を原価管理として扱っているのである。しかしこのような程度の行為を原価管理と考えてはいけない。
E 直接施工の生産性向上で利益管理
A工事の標準予算額が\500,000で、標準賃率\500であれば、予想される総延べ標準施工時間は1,000時間となる。目標予算額が\400,000であれば、施工時間1,000時間を動かすことが出来ないと仮定すれは、賃率を\400に切り下げなければならない。これはでは作業員にしわ寄せとなり作業員の不満が蓄積する。そこで賃率\500を下げずに生産性の向上により施工時間の1,000時間を750時間に切り下げることができれば、賃率の変更なくして\375,000となり、生産性向上による\25,000のコストダウンとなるのである。これが原価管理の手法であり考え方である。
F 元請による下請企業の利益管理の重要性
A工事を下請企業に\500,000で外注した場合でも、下請企業の施工時間を生産性を上げるように元請の技術者管が管理すれば、下請企業は大きな利益を上げることができる。しかし一般的には元請企業の技術者は、下請企業の生産性には関心はなく、契約によって工事金額が確定するから、下請の施工時間に関心を示す技術者がいない。何故なら元請にとって下請企業が儲かるか損するかの関心がないからである。しかし、元請の全工程の流れとA工事の流れは深く関係しており下請の利益管理に大きく作用する。下請の施工が独立したものではなく、元請の全体工程管理の影響を大きく受ける。元請の技術者は下請の利益まで注意すべきである。これからは下請の利益管理能力のない元請の技術者は、現場責任者としての能力がないものとして見なされる。下請企業も元請企業が激しい入札競争になっていることは承知であるから、理不尽な下請イジメでなければ外注契約金額の値下がりを受け入れるであろう。下請の利益管理もできない技術者は下請企業からの告発される時代になってきた。今後は、下請企業の経営管理の高度化は無能な技術者が見抜かれる時代が到来したと見るべきである。
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