新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 10/13(日) 14:53:45
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1.作業管理、無能化の始まり
建設業の現場風景でいつも気になる光景がある。現場責任者、技術者、監督者、作業員すべての関係者の緩慢な行動である。当人達は気がつかないであろうが、高度成長期の初期の時代は、よくもこんなに一生懸命に働けるものだなあと感心したことを思い出す。建設業はいつからスローテンポ作業が常態化したのであろうか。土木工事を例にすると当時の施工は機械不足のため人海戦術であったから、作業員の施工効率が重要であった。その後機械施工に代わり現場の作業量は機械施工によって飛躍的に上がった。施工の主役は作業員から建設機械に移ったため、作業員が施工上の主役から補助員の立場となった。そのため建設機械が稼働している間は施工中で、作業員や監督等の関係者は現場見学者になってしまった。全員が建設機械の稼働に目を奪われている。現場見学者の人件費が膨大に発生しているのに気がつかない。この光景は原価管理をしていない証明でもある。
2.生産性に気がつかない関係者
現場作業員が10人いる場合、1号現場で4人の作業が必要になった場合に、他に作業現場がないため、待機組の作業員6人が「遊んでいるぐらいなら現場に行け」と言われ、不必要な6人の作業員が現場に参加する場合がある。しかし、作業場が4人体制の施工環境の場合は、他の6人が現場に来ても作業に参加することが出来ないため、現場の待機常態になる。したがって、生産性が向上しないのに人件費だけが1号現場の原価に加算される。現場待機組の6人は作業をしている振りをすることが常態化している。これも原価管理がされていないため起こる現象である。工事の出来高進捗度に気をとられて、全作業員の「純粋作業時間」が原価管理に重要なことを忘れている。これは本格的原価管理を知らないためである。現場で遊んでいても人件費が発生していることを注意しなければならない。
3.原価計算制度の無能化に気がつかない関係者
作業員4人で施工すべき現場に、待機組の6人を投入しても現場で待機するだけで、本社で待機している場合と何ら生産性が変わらない。しかし現場で待機させると原価が発生したと判断され、その現場の原価に算入される。これは本来の真実の原価計算を無視したことになり、正確な原価計算制度を無能化させていることである。我々は、何のために正確な原価計算を求めているのであろうか。このような問題点は、原価計算の分野に無数に存在する。無神経な関係者によって原価計算の威力を無能化させている責任があることを忘れてはならない。
4.現場は怠け者の育成制度
過剰な作業員投入状況の中で起きる状況は、平均的に作業行動が緩慢である。それは過剰な作業員がいるため、現場作業が緩慢なトレーニングの場となることであり、現場待機組の6人が新現場に移動しても、前現場の緩慢トレーニングを受けたため作業スピードが上がらない。人間の行動とはそのようなものである。4人で作業すべき工事は4人で施工することが正常な作業行動であろう。近年の現場を観察するとキビキビした行動が少なく、だらだら作業の光景が多いことは残念であり、これでは安全管理も機能しないし事故が起きるのも当然である。原価管理の専門的視点でみると耐えがたい光景である。中国での指導でこの点を指摘し改善すると驚くほどのコストダウンになった。当然のことである。
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