<16>原価の概念を検討する(その1)
新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉  投稿日 10/20(日) 23:00:19  返信も含め全削除

1.原価概念の整理検討
 経営者や本社の原価管理者、現場技術者、経理担当者、営業担当者等の立場によって、原価計算に対する考え方が大きく相違する点を前回までに指摘した。建設会社の内部にいる関係者同士が原価の概念が違うため、社内で原価に関する連係がとれない場合があり、原価管理が十分に機能しない場合がある。そこで原価の概念を根本から整理する必要があるのである。

2.経理担当者も原価概念で揺れる
 経理担当者は、株主や税務当局、金融機関、許認可機関、格付機関、発注者等外部の決算書提出先を意識することは当然である。外部の利害関係者の思いも必ずしも一様ではない。例えば課税負担軽減を考えれば原価を高めに利益は控え目を意識するし、発注者等に対しては工事成績を有利に表現したくなるものである。したがって、利害関係者に中立思想で対応することは難しいものである。このように経理担当者も原価の概念で揺れるのである。

3.経理的原価分類
 経理担当者が外部に報告する決算書等の原価項目は、材料費、労務費、外注費、経費に分類される。なぜ経理的分類がこの原価費目になるかと言うと、原価費目に不正がなく正確な記録を確保するため、領収書と照合し易い支払先項目の表現を用いたためである。これを支払先別科目分類という。支払先が建材店であれば材料費で処理し、支払相手が作業員であれは労務費として処理し、下請企業であれば外注費となる。領収書の支払先と勘定科目の項目が一致する方法である。これが経理の伝統的勘定科目設定理論の根拠である。経理担当者としては、内部監査や税務署等の外部監査の視点から不正がないように、領収書チェック型科目の設定として帳簿の処理が要求されたのである。しかし、原価計算は領収書チェック型では本来の機能が果たせないため、原価を用途分類や目的分類、機能分類等の原価概念が必要となったのである。この点が現場技術者と経理担当者の原価概念が対立するところである。

4、材料費の計算
(1)材料の素材費
 材料費については各種の分類法があるが、建設業における材料費は、建造物の本体の素材と仮設工事等の補助的工事で消費される材料に二分類することが良い。いずれも材料費で処理するが、これらの材料は消費形態に大きな相違がある。建造物の本体の素材となる材料は、建材店等から購入した価額が材料費として処理するが、材料には引取運賃や運送中の保険料、荷役費、仲介手数料等の仕入附帯費が発生する場合がある。これらの仕入附帯費等を材料副費といい、材料の素材計算にも影響を与えるのである。
(2)材料副費の扱い
 仕入附帯費等の副費は購入材料の原価に算入して処理する。購入した材料が同一の現場で消費される場合は、材料副費は材料費で処理すればよいが、数ヵ所の現場で消費する場合や一部が本社の倉庫に在庫される場合は、材料副費を慎重に計算しなければならない。材料副費を購入材料別に配分して購入単価を修正しなければならない。この材料購入単価の修正は手数が掛かるため、材料副費を別途集計し材料費の消費高に按分計算する方法もある。

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