新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 11/24(日) 15:40:38
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1.原価計算の種類
原価計算はいくつかの形態に分類することができる。その一つに個別原価計算と総合原価計算がある。個別原価計算とは、1個の生産物の原価を集計する方法であり、総合原価計算とは大量に生産した製品の原価の計算をする手法をいうのである。
2・個別原価計算について
個別原価計算とは、1個の生産物の原価を集計する技術であるから、建設業や造船業、航空機産業のように比較的大型の生産物を生産する場合で、受注契約に基いて生産する形態をとる産業で用いられている。その生産物に対する原価を集計するのであるから、個別原価計算の計算手法は比較的単純な計算が多いのである。そのため個別原価計算の思想や計算技術が遅れたのかもしれない。受注産業の中で特に建設業の原価計算が遅れた理由は、他の産業と違い工場生産できないことを理由にしてきた。また建設業は、販売契約によって納入価額が確定しているため、生産原価についても目標値も建てやすく、目標原価以下で生産さえすれば経営が持続できるのである。そのため原価計算や原価管理は比較的容易な方法の簡便法的原価計算や簡易原価管理が横行してしまったのである。
3.総合原価計算について
同種の製品を大量に生産する場合に用いられる原価の集計技術であり、これを総合原価計算という。総合原価計算は、商品生産の場合に用いられる計算法で、この生産形態の特色は、生産行為が先行し後に販売行為がくる形態である。建設業のような受注生産の形態とは生産行為と販売行為が逆になっている。そのため原価計算に対する考え方に大きな違いが生ずるのである。受注産業に比較して商品生産業は非常に厳しい生産管理が要求されるのである。
4.商品生産業の原価計算や原価管理に学ぶ
商品生産の場合は、将来の市場で売れるか売れないかが分からない状態で膨大な設備投資が強いられ、その投資の回収も非常に不安定な状況下で決断しなければならない。そのため設備投資の段階から緻密な計画と原価計算が要求され、原価計算も緻密で高度な手法が研究されている。これに対して建設業のような受注産業の原価計算の遅れは想像以上である。そこで総合原価計算における原価計算の思想や原価管理の思想に学び、個別原価計算においても緻密な原価計算の手法や緻密な原価管理の手法を導入し、建設業の原価計算についての再構築をしなければならない。
5.緻密な原価計算に学ぶところ
総合原価計算において特に優れている原価計算の手法は、共通費である製造間接費の製品別原価配分計算である。製造業の製造間接費に相当するものは、建設業では工事間接費といい現場共通費のことである。製造業における製品別共通費の中で、工場の照明用電気料を例にとってみると、窓際の明るい作業場では電気を使わず仕事し、暗い奥の作業場では電気が必要となるが、この場合の電気料は共通費として製品に等分に配分される。これでは電気料を正確に原価計算をせずに平均化しているではないか、建設業界ではこのような場合どう対処しているか。原価計算がなぜ難しいかはこの点にあるのである。
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