新規投稿者 地域経済研究所・阿座上洋吉
投稿日 12/1(日) 18:04:01
返信も含め全削除
1.事例・原価計算の難しさ(その1)
前回の製造業における工場の照明用の電気料を例にとると、窓際の明るい場所で作業する場合は厳密に考えると電気料を掛けないで済むため、コストが安く完成し奥の暗い作業場では電気料がかりコストが高くなる。この状況を正確に原価計算すれば、製品の品質に変わりがなくとも原価の相違する製品ができ上がる。そこで工場における原価計算では、電気料等の製品別共通費はわざわざ共通費として処理し、すべての製品に均等に配分するのである。原価計算とはただ正確にその製品の原価を集計するのではなく、製品全体で電気料の負担をさせる考え方を採用しているのである。建設業においても現場別に認識可能な原価であっても、現場共通費として処理すべきものがあるのである。
2.事例・原価計算の難しさ(その2)
工場の作業員に対する家族手当や通勤手当が支給される場合についても、電気料と同様の現象が発生する。家族もちの行員が生産した製品が家族手当分だけ高く出来上がり、独身者が生産した製品は安くなって算出されるため、同一製品の原価にバラツキがでてしまう。通勤手当についても同様の現象が発生するため、家族手当や通勤手当は製品共通費として処理し、全体の製品に等分に負担する手法が採用されている建設業における原価計算についても同様の課題が発生するのである。
3.共通費の発生形態と原価計算の難問
上記の電気料や家族手当、通勤手当のように、製品別個別原価として認識できるものであっても、共通原価として認識する方が原価計算として馴染むものがある。原価計算が問題になるところはこの点であり、未解決の問題を多く抱えているのである。例えば、現場の代理人や技術者等についても同様の問題が発生する。完全な能力主義の賃金体系であれば、原価計算上問題はないが、日本の賃金体系はなかなか完全な能力主義の賃金体系にはならない。そのため能力が同一でありながら年令や役職によって賃金レベルが相違する。これでは賃金が安い技術者に取り替えるほうが原価計算の面で健全化が進むのである。
4.年令型賃金体制の原価計算上の課題
同一能力の技術者でありながら年令型で賃金の格差がある場合、高給取りの技術者が施工すれば現場の利益は少なく算出され、若くて安い賃金の技術者が施工すれば利益が多く算出されることは、原価計算の視点でみると真に遺憾なことである。何故なら同じものを生産する場合は同一価額になることが好ましいからである。それでなければ2倍の賃金を得ている技術者は2人分の成果を上げるべきであるからで、この点で日本の年令型の賃金体系が原価計算上からみると無理がある。これから始まる本格的市場経済の競争を考えると、年令型の賃金制度が崩壊せざるを得ないのである。
5.賃金制度の国際競争と原価計算
今までの日本は、本格的に市場経済の競争をしたことがない。もし能力に合った賃金体制(自分の賃金を自分の力で稼ぎ出す能力)の企業が競争相手なら、自分の企業は間違いなく負け犬となる。国際化が進んだ市場経済の中で建設業以外の産業は、このような世界の賃金体制の競争に巻き込まれているのである。原価計算の問題から経済の国際化を検討しなければならない時代が到来したのである。
|