<47>技術・技能の伝承法がどう変化するか    
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 1/4(日) 13:41:03  返信も含め全削除

1.集団主義時代の技術・技能の伝承法が崩壊した
 日本の集団主義が崩壊の危機にさらされている。集団主義が崩壊する傾向は世界的な現象であり日本だけの問題ではないが、島国で孤立した日本の集団主義の文化は近年まで持続していた。しかし近年急速に崩壊が始まってきたのである。常に仲間による集団によって行動しようとする文化は決して悪いことばかりではないが、従来の日本のような均一化した思想をもつ時代の以心伝心が通じた時代は良かったが、近年の世代格差があまりに大きく世代異質論の時代になり、集団そのものが成立しない状況になってきた。集団主義の中で伝承された技術・技能の継承方法にも過去か型では機能しなくなってきた。職業訓練校や専門学校で行う基礎的な技術・技能の教育は今後も続くであろうが、企業独自に開発した技術・技能の伝承法が消えようとしている。過去の集団化の中の技術・技能の伝承法は、職人的な伝承法であり必ずしも適切な指導法ではなかった。指導法を知らない職人によって行われていたため、伝承に時間が掛かり過ぎて今日では機能しなくなったのである。

2.個人主義時代の技術・技能の伝承法
 日本は、個人主義化した世代が40才代までに達しており、過去型の技術・技能の伝承法では継承されなくなってきた。個人主義時代には新しい技術・技能の伝承法を採用しないと、技術・技能にバラつきが生じ一定水準の品質が保てない状況になる恐れがある。しかも短期間の訓練によって技術・技能がそれなりの水準までの成果が上がる伝承方法でなければならない。何故なら昔と違って人件費が高い時代であり、早期に能力を戦力化する必要があるからである。そのスピード伝承法がマニュアルによる手法である。今までの日本には本格化した科学的な技術・技能の伝承法がなかったのである。人材を高レベルの技術・技能まで早期に引き上げる科学的手法の研究がなかったのである。技術・技能は個人の努力だけに任されるもので、企業としては関与するものではないと考えていたのである。近年の競争激化の時代は早期に技術・技能の水準アップすることが企業力になるとする考えが出てきたのである。この人材のレベルアップシステムこそが企業の知的財産であり、その後に現場でも実践的に利用され、施工のため進化する支援システムの役割を果たす知的財産である。

3.技術・技能の新しい伝承法としてのISO
 ISOは単なる過去に要求されていた品質管理のシステムではない。過去の品質管理とは現場担当者個人の技量に任される品質管理であった。品質管理の計画書が作成され、その手順にしたがって実施される命令書の性格をもっていた。計画書に表明された品質に近づくように統制するシステムであり、計画と実施した成果品の差異について原因分析までを品質管理とよんでいる。しかし計画書作成の段階で品質レベルが固定化してしまう欠点があり、また現場担当者が計画書作成者より優れた技術・技能保持者である場合もあり、その点で計画書についての現場に不信感が募り、品質管理がなかなか受け入れてもらえない状況もあった。ISOはこれらの欠陥を修正し科学的品質管理についての知的財産としての価値を高めた制度である。決して従来型の品質管理の思想と同一でないことを留意すべきである。

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