<61>ISOの威力は作業の標準化から
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 4/11(日) 14:23:20  返信も含め全削除

1.デザイン優先時代と分業の鮮明化
 日本人の作業文化は、個人の能力に期待する思想が非常に強く、期待された本人もそれに応えるだけの成果を十分に上げていた。これは日本の職人気質といわれるもので細かな指示はせずに本人のアイデアや技量に任せるという文化が根付いていた。宮大工の真髄はこうような文化の中で醸成されたものである。しかし近年の物づくりの手法が変化してきた。デザイン担当、設計担当、施工担当等の専門化が進み分業化が鮮明になってきた。近年の建造物はデザイン重視の時代に入り道路、橋、建物等の公共物もその場の景観に溶け込んでいるかが問われる時代になった。地域空間論、街並み空間論、商業空間論等が盛んに論議され、地域の新空間が重要視される時代になった。そのため新空間に馴染むデザインが確定してから設計の段階に入り、機能的な設計や構造計算の段階に入るのである。伝統的な宮大工全盛時代の建造物施工の手法は、景観に馴染む建造物のデザインから構造や強度計算、施工にいたるまでが宮大工の肩に掛かっていた。近年のデザイン重視の時代はその道の専門家が要求され、次の段階で設計に入りこの段階を経て施工業者の手に渡る。それぞれの段階が高度な専門分野に分業化が進んできた。

2.いよいよ本物のISO重視の時代が到来した
 デザイン、設計段階が終了すると施工段階に入るが、ひと昔とは違い施工業者は施工に専念することで裁量権が小さくなった。施工業者は要望される建造物を高品位で安価に施工することが使命になった。そのため施工についての技術、技能、作業等について施工業者として知的財産が必要となってきた。宮大工時代の個人能力に頼った時代が終わり、施工企業としての技量を蓄積する時代になった。作業を詳細に分解し標準化し技術、技能をノウハウとして蓄積する時代が到来した。個の時代にISOの思想や手法は益々重要な道具になるのである。公共工事に関して営業優位説が流れ形式的にISOを取得するのではお粗末である。このような考えで取得したISOでは名刺に印刷することが目的になり、現場の施工に無縁なISOになることは当然である。ISOは日常現場の施工に無くてはならない道具でなければならないのである。

3.ISOは電子情報化で戦力化すること
 ISOが施工の道具として利用されるにはいくつかの条件がある。第1の条件はISOが品質管理に日常連動して施工実態に合うことが基本である。そのため素早く変化し修正できる仕組みが必要である。書類上で管理するISOでは修正力が弱く実践的ではない。そこで電子情報化することで修正が容易なISOの運用が必要である。第2の条件は技能マニュアルの部分を速やかに進化させるシステムが必要である。ここがISOの真髄であり最も適しているのが電子情報化である。ただマニュアルやISOは多民族圏で発展したノウハウであり、日本人に定着しにくい側面があることを十分に認識して進めなければならない。その上で日本人の歴史観・社会的背景・文化的思想を考慮し、ISOの本質を十分に見極め、更に日本人に馴染むように工夫し、全社員が納得して活用する価値を認識しなければ本物化することは難しいのである。

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