<63>公共工事の入札とISO適用方針に変更
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 4/25(日) 16:30:40  返信も含め全削除

1.公共工事についてのISOの実態
 国土交通省は、公共工事入札についてISOの適用方針を2004年度から変更することになった。ISO9000シリーズについては、入札の条件にすること自体が規制の効果を発現するため好ましいとは言えないという意見があり、品質管理に限定すべきであるという意見が多かったのである。このたびの国土交通省の適用方針の変更は、これらの意見の影響もあるものと思われる。ISOの認証が入札条件になりそうであったため建設業者はその優位性を確保するためISO認証取得する業者が増加したことは当然であり、建設業者にとって入札条件の優位性の確保のための行動として、ISOの認証取得が目的となってしまいISO本来の目的を満たすものではなくなってしまった。したがって施工現場においてはISO本来の品質管理のために利用するものではなく、ISO認証の継続するための証拠資料作成が目的となり、現場技術者は形式的な書類作りを強要され、これが現場技術者の大きな負担となり不満の声が大きかった。このように現場ではISO本来の目的である品質管理に運用された形跡がほとんどなく、ISOの認証取得自体が目的となっていた。社長や営業マンが名刺に印刷しISOを取得したことをPRすることに懸命になる程度であった。したがってこのたびの国土交通省のISO適用方針の変更は、建設業界にとって大きな転換期となる可能性が出てきた。

2.国土交通省のISOに関する適用方針変更の要旨
 2003年度までに実施した試行工事で検証した結果、ISO認証取得の条件を入札条件からはずし、品質管理について発注者の監督者による立会いによる段階的検査確認業務を、受注者の検査記録に置き換えることができるように変更した。これによって発注者、建設業者共に省力化の可能性が出てくるものと思われる。そのため国土交通省は2004年度よりISO9000シリーズの認証取得を入札条件とせず、受注者の希望によって品質管理業務を省力化の方で利用することになったのである。

3.本物のISO9000が実力を発揮する条件が整ってきた。
 品質管理としてのISOがなぜ建設業界に定着しなかったかは言うまでもないが、施工現場で本格的に稼動せず書類上でしか利用されていなかったことが、本物として定着しなかった主たる原因である。もし、建設業界が本物のISOとして施工現場で日常機能する品質管理の道具として定着していたのであれば、国土交通省の適用基準も変わっていたに違いない。これは建設業者だけの問題ではなく、認証機関やコンサルタント等、建設業関係者すべてに責任がある。業界関係者が建設業界のことをもっと適切に詳細に認識していれば、ISOはもっと知的な財産として機能しISOの威力を蓄積し、建設業界にとってはなくてはならない品質管理の道具になっていたに違いない。まことに残念なことである。しかし視点を変えてみればこれからのISOが建設業界にとっていよいよ本物で本番を向かえる可能性がでてきた。品質管理は発注者に言われなくても自社企業にとっての生き残り戦略として重要な道具であることには変らないのであって、いよいよ自社企業のための自社企業自身の品質管理戦略の道具としてISOが重要視される時代がきたのである。

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