<102>冷酷な労働価値観と情緒的な価値観の揺れ
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 1/30(日) 13:28:27  返信も含め全削除

1.冷酷な労働価値観が必要な背景
 働く者にとっての能力主義は、ドライで冷酷な競争原理が作用する思想であり、働く者にとって決して居心地の良いものばかりではない。従来型の年令によって仕事の内容や役職が決まり、年令によって昇給する年令型のシステムの方が、働く者にとっては「和」の思想による仲間意識が強く、情緒的で人間味のある働きやすい面が多かったのである。しかし年令型の人事体制は社会主義的な人事システムで、人間の競争関係が弱く作用するため、企業間の競争が激しく作用する新市場主義の時代には、年令型の人事が適切に機能しなくなってきた。今や能力主義は好き嫌いの問題ではなく、企業が生き残るための選択であり、ビジネス界で通用するか通用しないかの選択の問題となってきた。この時代の経営者はドライに生き残るために能力主義に切り替える時期にきている。未だ能力主義に代わる新しい人事システムが研究されている気配もないし、現状として年令型の人事システムを継続する余地はないと考えるべきである。

2.情緒的助け合い型の人事制度
 人間は情緒的な心情に左右される特色をもっている。ドライで冷酷なビジネス観と情緒的な人生観等との二つの価値観に揺れている。他の動物界も同じで動物行動学で研究されている。動物は自分が生き残るために弱肉強食の部分は冷酷な新市場主義の部分があり、企業が継続するための争いのように、弱肉強食は自分のDNAを子孫に継承するための冷酷なシステムである。更に自分のDNAを承継するための性的争いも凄まじく、体力勢力の強いものがハーレムを形成し、強い種のDNAが継承されるシステムが自然界の摂理となっている。もしこの原理が作用しなければ当該種は進化もせずに地球から抹殺されていたはずである。この自然界の冷酷で激しい競争原理が経済に取り込まれたのが市場経済の原理である。したがって市場経済はまことに冷酷な競争原理が根底に流れているのである。その一方で自然界はもう一つの側面を持っている。弱肉強食や性的争いに打ち勝って新しく誕生した生命のDNAは、その後の手厚い親の手助けがなければ延命することができない。特に哺乳類の成長メカニズムは、親の情緒的行動がなければ大人にもなれないように仕組まれている。このように生物界は冷酷な競争原理と情緒的側面の二面性を抱えている。

3.情緒的部分の整理
 子育ての時点は、人間ばかりでなく全ての生物に情緒的な部分の行動が強く現われる。親の子育ては外敵からの防御や餌の提供等は情緒的愛情の行動である。特に人間の子育ては、情緒的愛情があってこそ精神的に安定した子どもが育つし、この部分が欠落していると情緒不安定な子どもになってしまう。人間は脳を高度に発達させたために情緒的部分が死ぬまで持続するように設計されている。他の動物は自立可能な時点が到来すれば冷酷な親離れの儀式によって親子関係を切断する。その後は弱肉強食の世界に放り出されるのである。場合によっては激しい競争相手にすらなり、情緒的親子関係から冷酷な競争関係へと一変する。このように冷酷な競争原理と情緒的な部分の二面性がある中で、日本の労働価値観はグローバル化した世界の影響を受けて揺れている。

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