新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 8/14(日) 13:39:38
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1.能力主義と職種主義時代の潮流
日本で能力主義時代と叫ばれて久しいが、なかなか能力主義が定着しない。長く続いた年令序列型体制が崩れないためで、その理由は、人間は基本的に保守的であり、急速な改革を嫌うものである。長い間続いた年令序列型の居心地に良い人事制度を守りたいという意識が強く、改革を合意するまでには至っていない。民衆は緩やかな改革を望んでおり決して急激な改革は求めていない。これは人間本来の特性であって当たり前のことである。したがって、十分に協議し改革は慎重にすべきである。しかしながら、それは社会がスローテンポの時代の話であって、合意するまでの時間的な余裕があり、民衆が合意するまでの十分な検討ができた時代の話である。今日のような社会の変化が速い時代には、以前のようなスローテンポ時代の手法を何時までもとっていれば、企業の改革自体の重要な時期を逸してしまうのである。人間は頑固で保守的な面を強く持っているものであり、それが主たる要因であることを忘れてはならない。
2.就職というグループ(企業)選択と職種意識
能力主義に移行することが難しい第二の理由は、日本の労働市場が諸外国と比して職種意識が非常に低いことである。新卒学生の就職時にその特色が現われる。就職時には職種を確定して企業を探すのではなく、どの企業に入社したいかを選択する。職種選択は二の次になってしまう。これは就職ではなくて就社であると言われており、日本人は自分がどのグループ(企業)に入りたいかを重視する。目的のグループに入社してから、企業の事情や本人の特性を多少考慮して配置する。配置は必ずしも当人の意とするものでなくても我慢して仕事をさせる。その配置も数年間で配置転換が行われ、職種意識が持てないような状態が続き、専門的職業が身につくようなことがない状態で働くことになる。これが日本人の職種意識が低い要因ともなっている。定年後に第二の職場探しの時点で「貴方は何が出来ますか」の問いかけに、「部長なら出来ます」との返答しかできない。これでは答えになっていないし職種意識がない証拠である。
3.職種意識(職業意識)と能力判定
能力主義時代になって能力判定が難しいという意見がある。たしかに人間の能力判定は難しく、職種によっては仕事の難易度等の問題もあり、簡単に判定できないものである。諸外国の職種問題と能力判定情況をみると、基本的には職種別に賃金相場があり、職種別に能力判定のモノサシが分りやすい状況下にある。長年の間に時間をかけて出来上がった職種能力判定の文化である。しかし、日本には職種文化すら近年スタートしたばかりであり、職種別職業意識が未だに育っていない。近年、パートタイマー、派遣社員、契約社員による職種を前提とした入職方法が定着してきたが、まだまだ欧米並みの能力主義の判定基準の確立までには至っていない。近年、職種別賃金相場が労働市場で公表され、少しずつ職種別労働市場が確立されてきた。職種意識が定着すれば、能力主義が少しは進展するであろう。能力主義が常態化するまで少し時間が掛かりそうである。
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