<144>市場経済の恐ろしさを知らない日本社会
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 12/11(日) 14:05:07  返信も含め全削除

1.市場経済化の世界的潮流
 日本社会は自由主義社会でありながら、日本人は社会主義的思考が強いと指摘されている。官主導の行政指導や許認可制度に馴染み、社会主義国の手法に非常に類似していた。この官主導や許認可等の規制は決して悪いことばかりではなく、不正や品質確保等について適正な役割を果たしており、社会的にも合意されていた。近年の世界的な規制緩和の潮流は、社会主義圏の国でも規制された計画経済の手法から、自由な経済活動である市場経済のシステムが導入され、民主導の方向に進んできた。これは大きな政府から小さな政府を目指すものであり、その傾向は世界的にも広がってきた。官から民への動きは益々活発化しており、PFI事業や指定管理者制度等、民営化の動きは止める事はできな。政府や行政が主管していた事業を民間に任せ、市場のチェックに任せるという動きである。これは効率を上げるためにも市場に任せる方がよく、コスト縮減のためにも必要である。

2.市場経済化を理解していない日本社会
 近年、民営化の一環として官が主管していた各種審査について民営化が進んできたが、必ずしも適切に機能していない。近年の事例のように建築基準法で定められた構造計算の審査機関が機能していないのもその例である。他にISOの認証機関、財務分析センター、各種資格試験についても不安が付きまとっている。これは日本社会における市場経済の仕組みの認識に問題がある。形式的な書類が完備していれば審査が通るというシステムは、形式審査であり一般的に書類主義という。本来の市場経済における審査とは、形式的な書類審査を言うのではなく、実質的な内容の真偽の審査であって、形式的に書類が合法であっても実質的内容に不正があれば、審査を拒否するのは当たり前である。したがって仮に不正等を見逃すと審査機関が役割を果たしていないと判定され、この審査機関は市場から抹殺される。これが市場経済の当たり前の掟であって、形式的書類審査で良いとの認識は間違いであり、市場経済の認識がない証拠である。審査機関は自分の首をかけて市場に宣言する義務があることを忘れてはならない。

3.市場を裏切った者には市場が許さない
 市場経済は建前や形式、書類主義では通用しない実質主義の審査が要求されるから、本物以外は市場で暴露され市場の強烈な制裁を受ける仕組みである。人脈や虚勢によってのごまかしが通用しないのが市場経済であり、一時的に審査が形式的に通過しても、発覚するや市場によって直ちに強烈な制裁を受ける。しかも一度制裁を受けるとニ度と同業でビジネス界には復帰できないほどの強烈な制裁である。市場経済の恐ろしさは市場を裏切った者には市場が許さないという掟である。建前主義や形式的書類主義がいまだに通用している日本は、本格的な市場経済化になっていない証拠でもある。官が主管していた時代であれば、お上の行為に一目置いていた民の行動は、多少性善説が作用していたのであろう。そのため限度を超えた不正な書類は持ち込まなかったのである。そのため形式的な書類審査でも一定の機能は果たしていたのである。

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