新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 2/5(日) 09:10:44
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1.昔の日本は保守的な技術伝承法であった
日本には伝統的に技術を伝承させる仕組がなかった。実際には技術の伝承法がなかったのではなく、親方や先輩の技術を盗んで身につけるという保守的な伝承法があったが、このような伝承法では長期間を要し積極的伝承法とは言えない。したがって、現代に通用する技術伝承法ではない。この点で欧米のような積極的技術伝承法と比較すれば開発が遅れたことは確かである。特に米国は、多民族国家であるから積極的技術伝承システム必要になり、マニュアルによる技術伝承のシステムの研究が早くかあら進められてきた。然るにわが国は、近年、ようやくマニュアルの重要性が認識され技術伝承の仕組に関心が出てきた。米国も当初のマニュアルはレベルの低く、単純作業の指示書に過ぎなかった。当初は決して今日のような高度に進化した技術伝承法ではなかったが、今日では効率の良い技術伝承法として、高度な技術伝承のノウハウにまで高められ知的財産としての位置付けされている。この知的財産が企業の競争力に深く関連しており、企業の財産価値として益々重視されてきた。
2.日本は未だに技術伝承法の意識は低い
日本で最初に欧米型の技術伝承のシステムとして導入されたマニュアル文化は、流通業のチェーン店やレストランチェーン店の本部のオペーションシステムとして米国から導入されたものである。高度な技術についてのマニュアルではないが、パート、アルバイト等の人材を長時間掛けて熟練させるよりは、仕事の内容をマニュアルによって明示し、容易に一定レベルの作業を可能にするシステムとして機能させるものである。今や高度なレベルの技術ほどマニュアルが要求される時代であり、航空機の操縦マニュアル等重要な作業にはマニュアルはなくてはならないものである。当初のマニュアルは、仕事の内容についての指示書の役割としてスタートし、作業の標準化、作業標準の効率化へと進化を重ねてきたのである。企業間の競争力の差異がマニュアルの格差であるという意見さえあるのである。ここにマニュアルが企業の知的財産と言われる所以である。
3.知的財産としてのマニュアルとその課題
進化を続けるマニュアルは知的財産であり、この知的財産が企業の格差を招くほどの力があるのであれば、企業は当然マニュアルの価値を認識し、高度な知的財産として進化させながら蓄積をしなければならない。しかし、マニュアル作成時によく見かける光景は、先輩技術者がマニュアル作りの抵抗勢力になることである。自分の技術を公開することになるため、相対的に自分の存在価値が希薄化することを恐れるためである。人事の事情も変化し、年令型人事から能力主義型人事に移行している時代であるからなおさらである。先輩技術者が自分自身で研究し、自分の腕を磨いてきた技術を簡単に公開できないのである。そのため、技術は個人財産として蓄積されるため、その技術者が退職すれば企業には何ら知的財産が残らない。そのため人材流失によって企業の技術力が大きく揺さぶられるのである。この点は企業側から見れば重大なことであり、何時までたっても個人の知的財産が頼りになり、企業の知的財産の蓄積がされず技術が不安定化しているのである。
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