新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 2/12(日) 13:23:20
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1.システムとしての知的財産の蓄積
知的財産は、特許権や実用新案権等の法律的権利だけを指すものではなく、企業で開発された効率化のノウハウやシステムも重要な知的財産である。企業は人なりと言われる所以は、その人材の個人的能力を指すが、この人材の能力は個人に蓄積された知的財産だけを言うべきではない。一般的に優秀な人材とは、個人の知識や技術が個人の腕に蓄積されて場合を指すが、これでは個人の財産であり、何時までたっても企業の知的財産として蓄積されないのである。ビジネス界で高い評価を受けている企業は、優秀な個人によって支えられていることは言うまでもないが、単に個々人が優秀だとしても、優秀な人材の集合体に過ぎない。企業力として社会的に高い評価を受けている企業は、優秀な人材の個々人のノウハウが全社的に合意されたものを、システム化して共有化しているのである。つまりノウハウが企業の知的財産として蓄積し機能するためには、その蓄積されたノウハウが全社的に日常的に共有財産として利用されるものでなければならない。
2.無形な知的財産作りの難しさ
個々の人材が日常的に進化する技術や学習によって蓄積されるノウハウは、当初、担当者の特性を持ったものであるから、必ずしもその仕事や作業は標準的なものではない。また研究や開発中の場合も個人やグループとしての思い込みがあり、強い特色のある独特な内容になる場合が多い。それらの技術が全社的に共有化して利用されるためには、全社的に合意された標準化が重要でなる。この標準化は事務系や工場の生産現場であろうが同じであり、作業場の適正配置や普段は何気なく活動している仕事環境を、科学的に研究し効率化し標準化することがポイントである。この標準化した技術が全社的に合意されると共有化が成功する。共有化すればノウハウは日に日に進化し、企業の知的財産として益々ノウハウの価値が増殖するのである。
3.建設業界に見られる知的財産作りの課題
建設業界は知的財産が蓄積され難い体質を持っている。現場代理人の制度が大きく影響している。代理人とは経営者の代理として現場の最高責任者である。この技術者は、若い時から現場を任されるため、技術の蓄積が自分独自に開発した技術を自分自身に蓄積するため、自分独特の技術となり、技術者相互間の互換性が非常に悪い。このように建設業界は知的財産が企業に共有財産として蓄積し難い環境にある。特に工事管理技術は技術者の特色が現われ、個人の能力差として扱われている。例えば、品質管理にISOを用いているのに、技術者ごとに自分独特の品質管理で行われ、品質管理は必ずしも均一化されていない。技術者別に品質レベルがA,B,Cランクの差がある場合、技術者別にランクの違う品質の工事が行われる。つまり他の業界で機能するISOが建設業では機能しないのである。ISOは技術者個人の腕をランク付けしたものではなく、企業が生産する品質を評定したものである。このように品質管理ばかりではなく、工程管理、安全管理、原価管理のすべてに、共通性が乏しく企業に知的財産を蓄積する思想が欠けているため、何時までたっても企業力が付かない業界である。
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