<171>日本的経営はどこまで耐えられるか
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 6/18(日) 20:53:21  返信も含め全削除

1.日本的経営が成功した社会的背景
 日本の高度成長に貢献した日本的経営の威力が世界から絶賛された時代があった。この日本的経営が成功した時代背景と要因について検証し、日本的経営の特色を再確認すべき時期にきている。日本的経営の特色は終身雇用制と年功型賃金制度にあるが、この制度が勤勉な日本人の労働価値観と融合し日本的経営の仕組みを創り出したが、近年多くの問題が噴出してきた。また市場経済における高度成長時には、競争原理が激しく作用するため、過度の格差社会になる可能性が高い中で、日本の高度成長期は平均的に成長し格差社会を避けることができた。一般的には競争が激しく作用する市場経済では、中国のように大きな格差社会なる必然性があるが、なぜ日本の高度成長期には平均的な成長を遂げることができたのであろうか。しかも80%以上の一国民が中流意識をもつような平均化した経済成長は珍しい現象であった。このような現象に日本的経営が格差社会を回避する役割を果たしたとも言われている。

2.なぜ日本的経営で格差社会を回避できたか
 日本的経営の仕組みである終身雇用制や年功型賃金制度は、社会主義における計画経済の制度であるが、日本人は格差社会を好まない民族であり、旧ソ連や旧中国よりも社会主義の思想に馴染んだ民族である。そのため終身雇用制や年功型賃金制度は、当然のように経営文化として定着したのである。更に、「寄らば大樹の陰」とか、「強いものにはまかれよ」といった集団行動に馴染んでおり、この集団主義の文化が終身雇用制や年功型賃金制度を成功させた要因となっている。この日本の経営文化として確立された日本的経営は、極めて社会主義的思想であり、企業内部が社会主義といわれる所以である。高度成長期の日本経済制度の特色は、企業内の人間関係が能力主義の人事に比較して無競争に近い状態であり、極めて社会主義的な人間関係になっている。その一方で企業間は激しい競争原理が作用する奇妙な市場経済であったのである。

3.弱競争市場の仕組みを作り上げた知恵
 世界標準の市場経済であれば、極めて激しい競争原理が作用するものであるが、日本では世界標準の競争原理が作用する市場経済では、企業内が社会主義的経営の仕組みを抱える企業では経営が成り立たない。そこで市場経済の仕組みを二重構造化する必要があった。表面上は世界標準の激しい市場経済の仕組みになっているが、一方で談合による第二の市場である弱競争の市場が存在していた。これは社会主義的人事の社員を抱える企業にとってなくてはならないものであり、企業が生き残るための知恵として水面下の取引が横行していたのである。しかし近年の市場経済の状況は、市場が地球規模で一体化するに従い、世界標準の市場経済の仕組みで動くようになり、日本独自の経営文化である日本的経営がグローバル化現象に耐えられなくなってきた。今日の市場経済は、過去の地球上では考えられないほどの激しい競争原理が作用しており、日本的経営も工夫しなければ、企業が滅びるどころか日本経済までも揺るがすことになりかねない状況下になってきたのである。

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