<184>建前主義が通用しない社会環境の変化
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 06/9/17(日) 20:52:21  返信も含め全削除

1.建前主義の言動や行動に異変
 本音と建前の論議は昔からあるが、本音は本心で行動する言葉である。これに対する建前という概念は、本音の対照語として用いられるものであるから、建前という概念は、本心に対して嘘の内容を意味している。当人としては建前による行動は、自分の本心から出た行動ではないから納得した行動ではない。このような建前による行動を定型化したものを建前主義という。人間は一人で生きることができないのであるから、建前主義者は自分の意見をあまり主張せず、集団における体制派に合わせる行動をとる。このような建前主義者の行動は決して悪いことばかりではなく、集団における和を保つためや人間関係を良好に保つためには、多少は我慢して過度なトラブルを回避しようとすることも重要である。これも人間としての特性であるから、最低限の建前主義は人間関係に重要な役割を果たしている。しかし近年の社会状況は、建前主義が後退し本音の行動が多くなってきた。

2.建前主義の枠組みと自由の価値観
 世の中には過度に反応する建前主義者がいるが、問題なのは建前主義の判断基準が、社会正義であると勘違いする点にある。確かに集団内の体制派の基準であることは間違いないが、嘘の行動になることに問題がある。また、本音で自己主張ばかりする人は、単に我が儘な場合があり注意すべきである。フランス人の自由観は、我が儘な人という意味ではなく、魂を自由にするという文化を持っている。他人の行動に口を出さないが、他人からも自分の行動に口を出すべきではないと主張する。過度な建前主義者は、社会の枠組みを重視するあまり、枠の規範の中で行動すべきと主張する。適切な事例ではないが、昔の日本の軍隊や北朝鮮の軍隊の閲兵を見ると、見事なほどに枠がはめられており、個人の考え方や行動が極端に制限され自由がない見本である。このような枠組みの強い社会は人類にとって幸せな社会であろうか。規律という枠組みの行動と枠組みの弱い自由軸の行動については永遠の課題であり、今後も議論が必要である。

3.建前主義から派生した形式主義の崩壊
 日本社会は根強く建前主義が浸透している。小さな島国で単一化した日本民族が、手形がなければ移動もできない地域封鎖政策の社会が長く続いていたため、この時代は本音で自由に行動できる時代ではなかった。閉鎖された小さなエリア内で、自分の主張を弱め、まわりに溶け込む生き方が必要であった。そのため本音と建前を上手に使いこなす必要があった。この建前主義の行動に馴染んだものに形式主義がある。真実な内容とは相違していても形式的な基準が満たされていれば了承される。形式主義は書類主義となって現われている。不正な構造計算の審査基準もこの形式的な書類審査で起きた事件である。過去に役所が実施した形式的な書類審査が機能した時代が終わり、民営化された審査機関は、実質的内用審査は当たり前であり、形式的書類審査で済んだ建前主義が、本格的市場経済での民営化時代に通用しなくなったことを強く認識しなければならない。

返信 ご意見やご質問をどうぞ

パスワード

一覧へ戻る】 ※最新の画面を表示するには再読み込みしてください.