新規投稿者 三木 伸哉
投稿日 05/2/5(土) 10:22:27
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潮騒の聞こえる宿舎
朝まで大連の初夜は、スズメバチとの格闘であまり寝付かれない一夜が明けた。船が出ていくらしい汽笛の音が聞こえる。開け放たれた窓から、うち寄せる波の音がかすかに聞こえてくる。
朝明けて船より鳴れる太笛の こだまは長し波よろふ山
茂吉の一首が浮かんでくる。
昆布取りをしている船であろうか、眼下の海を整然と隊列を組んでいく小舟の曳航、岩場に素裸の若者が糸を垂れている。窓の全面は黄海を舞台にした一幅の絵である。
ふと人の声が聞こえてきた。四階の宿舎のすぐ下に東屋があり、そこに一〇人ほどの学生が屯して、なにやら本を眺めながら呟いている。
耳を澄ますと、英語と日本語である。時間はまだ五時半、この時間にもう宿舎から出て学生たちは、この東屋に屯して日本語と英語を暗唱しているのである。
驚いた、腰をぬかさんばかりであった。これでは日本の学生が敵うわけがない。やがて学生たちの姿が三々五々消えていった。
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