新規投稿者 三木 伸哉
投稿日 07/8/19(日) 10:08:14
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ハルピンの土産店で
リヤカーを引く中年の男、ああ、あの顔は日本人に似ている。もしや残留孤児ではあるまいか。通りには中年男女に日本人らしい風貌が通り過ぎる、甲高い発音の中国語を話しながら。この北満の地にどれほどの残留孤児がいるのであろう。 そんな事を考えながら、大きな土産物の店に立ち寄った。煌びやかな商品が、綺麗なお姉ちゃんたちの、たどたどしくも商魂たくましい日本語のご披露。
「お兄さん、これはキャッツアイ、大きいの小さいの3つで1万円、どお?」
ああ、これがキャッツアイか、なんとも見事な光を放っている。その昔、家で飼っていたミーコという愛猫にそっくりのお目々だ。
雲南の宝石店で仲間が購入した宝石は日本では10倍に売れたという。このキャッツアイも日本に持ち帰り、宝石店にもっていくことにしよう。そうすればいくらか老後の足しになるかもしれない、と。ほくそ笑み、あと二つのキャッツアイをつけさせて意気揚々と店を出た。
帰国してから宝石店に持っていくまえに、鑑定してもらうことにした、なにしろ滅多に手に入らないキャッツアイだから。しばらく鑑定士はその石を矯めつ眇めつしていたが、「お客さん、これはただのガラスですね、どこで買いましたか」
「あのー、ハルピンの大きな土産店です」「残念でしたね、よく引っかかるんですよ」キャッツアイ5つは、まだ見事な光芒を放って引き出しに鎮座している。
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