回想中国 8 すわ!靴磨きと その2
新規投稿者 三木伸哉  投稿日 11/4/7(木) 06:49:33  返信も含め全削除
回想中国 8 すわ!靴磨きと その2
今度こそ正規の料金で
それから3ヶ月ほど経ったある秋の日であった。汚れた靴を穿いては、これから会う客人に失礼になる。今度は、男は避けよう。なるべく優しそうなおばさんを捜そう。大連駅の駅前から少し離れた場所におばさん方の靴磨きが並んでいた。
 ああ、ここなら前回のような値段をふっかけられないだろう。優しそうなおばさんを捜した、いたいた、目元の涼しげな、一見、高島礼子のような風貌のおばさんに交渉した。「多少銭(ドウシャオチエン)」「2元(リャンクワイチエン)」やはり2元なのだな。このおばさんなら前回のようなことはあるまい。やおら靴を差し出したら、高島礼子のおばさんは磨きはじめた。
そのうち盛んに言葉をかけてくる、まだ大連に行って日も浅いし、言葉が良く聞き取れない。おそらくチンプンカンプンの受け答えになったのであろう。
おばさんは傍らの男性に目配せしているようであった。

返信 1 三木伸哉  投稿日 11/4/7(木) 06:50:20  削除
サクラの出現
隣の靴磨きのおばさんに、一人の中国人の客が靴をさしだした。そのおばさんは瞬く間、5分くらいで磨き上げた。そうすると中国人の男は25元差し出した。一瞬目を疑った。確かに10元札2枚と5元札1枚である。どうして2元に25元もの料金を払うのか、貧者への一灯か、わからない。この調子だとまたまたふっかけられるかも知れない。
10分ほどで磨き終わって、2元を支払うと、私の手を高島礼子おばさんは、ピーンとはね除けた。
 しかし今度こそ日本人の面子にかけても、易々と高い料金を支払うわけにはいかない。こちらも臍下丹田に力を入れて身構えた。2元を拾い、おばさんの手に握らせようとした。そうするとどうであろう。優しげな、目元の涼しげなオバサンの顔が豹変した。むんずと私の腕をつかみ睨みつけている。
「日本人金持ち、そんな2元しか出さないのか。65元払え」と言っているようである。口角泡を飛ばしている。細身の体から渾身の力を込めるのであろう。
力では多少身に覚えがあると言っても、まさかここで暴力沙汰に及んだら、「日本人教師、大連の靴磨きのおばさんに暴行、強制送還で日本に帰国」というような見出しが大連の新聞に載るかも知れない。憤怒の形相のおばさんを前にして、こちらは、わりあい平然とした態度で、値段の交渉をした
私は「65元といわれても、そんな金はない。10元なら払う」と引き下がった。すると横合いから、泉ピン子のような感じのおばさんが出てきて、その同業者に何やら言っている。
「まああんた、いいんじゃないかい、10元で手を打ちなさい」とでも言っているのであろうか。高島礼子のおばさんの手に込める力がゆるんだ。そして10元を手に取った。
私たちの周りにいた大勢の観客は、なんだつまらない、もう終わったのかと言う表情で、ちりぢりに消えていった。
今日の教訓、人様の姿形、顔の作りだけで人間の甲乙を判断してはいけない。

返信する

パスワード

一覧へ戻る】 ※最新の画面を表示するには再読み込みしてください.