<2>商品生産と受注生産の経営特性
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/6/8(日) 23:50:19  返信も含め全削除

1.商品生産の経営特性
 通常の商品生産をする製造業であれば、市場が求める商品を生産するため、生産計画の段階に神経が集中する特色がある。生産の時点では売れるかどうか分からない状態で生産するのであるから、商品生産は、受注生産より厳しい生産環境に置かれているのである。果たして売れるかどうか見通しの利かない状況下で、未来の市場を想像して生産するのであるから、リスクが非常に大きい業界といえるのである。販売に不安がある中で工場用地や生産設備に大きな投資をするのであるから、投資に対するリスクも非常に大きいのである。更に、売れるかどうか分からない状況下で、製品が生産されてしまうのである。したがって、設備投資の前に綿密な市場調査が必要となるのであり、生産された製品の質や品格が消費者ニーズに合致しているか。販売のエリア、販売のルート等の市場の状況や、競争他社の実態はどうか等、各種の検討をしなければならない。このように商品生産の業界は、受注生産の業界とは違った経営環境となるのである。

2.受注生産の経営特性
 商品生産に比べ受注生産の経営の特性は、初期投資の段階に大きな違いがある。受注生産の業界では、「受注なくして経営なし」ということがよく言われている。つまり受注が確定してからでなければ、生産(施工)活動に入れないため、まず受注に関する情報に神経を集中する特色がある。つまり受注がなければ全ての経営活動が起きないのである。受注さえあれば生産(施工)活動が起き利益を計上することができるのである。このように受注に大きな神経を使う結果、受注獲得のために大きな精力を使う特色を持っている。そのため、比較的生産管理に弱点が存在する業界の特色がある。生産管理(建設業では工事管理という)には、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理の4大管理があるが、原価管理に各種の弱点が存在する。なぜ受注産業は、原価管理に弱点が出るかと言えば、受注した段階で売買価額が確定するため、生産原価の目標が定めやすい特色がある。受注金額から予定利益を控除し、予算原価という比較的目標の設定がし易いことが弱点に繋がっている。

3.予定利益の算定には
 予定利益の算定には、過去に生産された実績原価を参考にして、原価を推計する方法が一般にとられているが、この推計方法には二つの方法がある。一つは一般に公表されている統計資料によって、歩掛、単価、数量等を検討して予算原価を算出する方法であり、他の一つは、過去の自社の生産(施工)した実績原価から、歩掛、単価、数量等を検討して予算原価推計する方法がある。これを建設業界では実行予算と言っているが、このような過去の実際原価から、統計的な手法だけで予算原価を推計する手法は、あまり科学的とは言えない部分が多く、この予算原価によって原価を管理する工事管理とは、あまり適切方法とはいえないのである。原価を縮減する手法に無理があるためである。ただ、請負契約によって受注金額が確定しているため、予定利益を控除した金額を目標原価とするため、担当する技術者にとって理解し易く、使命感のような精神構造が伴うため、情緒的には多少機能するものと考えられる。

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