<5>適切な入札制度があるのか
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/6/29(日) 17:24:47  返信も含め全削除

1.発注者の想いと施工業者の選定
 発注者と受注者は基本的に幾つかの対立する構造があり、これが不安材料となっている。この対立構造を簡単に解決する方法が見つからないのである。まず施主として施工者に対しての想いは、第1に想定した品質の生産物が本当にできるのか、また、想定した機能が期待どおりに生産されるか、その他諸々に想定した事柄が期待どおりに生産されるか等、期待することが山ほどあり、この期待が大きいほどその裏返しが不安材料として大きく作用する。これらの不安材料を解消するために、施工業者の過去の実績調査による確認が必要になるのである。そこで法律上は建設業法の規定によって、発注者保護という建設業法の理念によっての規定があり、過去3年間の施工実績を監督官庁である国土交通省や都道府県へ提出して公開することになっている。したがって発注者は、公開されている施工業者の工事実績を綿密に調査し、現場で品質や品格を確認して施工業者を選定することができるようになっている。

2.自分が施主の立場の心情として
 仮に「自分の住宅を本気で一般競争入札の発注ができますか。」と言われたら、私なら間違いなく「ノー」と答える。なぜなら、大きな買い物をするのに、誰でもいいから一番安い業者に発注しますよとは、不安で絶対に言えないからである。個人住宅は勿論のこと民間工事がなぜ一般競争入札にならないかと言えば、不安で恐ろしくて不特定多数の建設業者で一般競争入札はできないからである。公共工事なら一般競争入札ができるというのもおかしな話である。極端な言い方をすれば公共工事は自分の金ではないから発注できるのか。この点を多くのひとに問いただしてみたが、自分の建造物では一般競争入札ができないとの答えであった。建売住宅や建売マンションのように完成品が確認できる展示場があれば別である。新築マンションで展示場がないとしたらよほどの信用ある業者であっても、未来の完成品を売ることは難しいはずである。発注者の責任として、信用できる相手を懸命に探し、信用できる業者を数社探し出して競争させれば、指名競争入札となるのである。

2.価額の合意点を探る
 建造物の品質や機能が決まると、次に建設費を決めなければ成らない。この場合も施主が建造物の品位や品格を重視すれば、安ければ安いほど良いという判定にはならない。従来のような品質と価格の単純な競争時代であれば、質の良い材料を使ってより安いものを作れば良かったが、今日のように成熟化社会になれば、材質の問題は当然であり、更に品位や品格、雰囲気、調和、豊かさ、快適さといった情緒的要素を評価する時代になり、施主との価格の合意点が益々難しい時代に入ってきた。その点からも総合評価や提案型等の幅広い評価基準が必要になってきた。ただ総合評価が一部の新聞で報道されているように悪用されているとしたら、大きな問題であるが、しかし受注生産の構造は単純な表面的問題だけではなく、奥の深いところに重要な問題が沢山あるのである。一般競争入札を否定する気はないが、一般競争入札が世界的にも成功していない。市場経済に馴染まない部分を解明し、今後の入札制度の問題として研究を進めていきたい。

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