<7>競争入札には無理な因子が混入している
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/7/13(日) 18:51:34  返信も含め全削除

1.発注者側における競走上の無理な因子
 発注者側に立ってみると市場における競争には無理な因子が多数含まれている。未来に生産される物件には大きな期待をもつが、本当に想定した品質等のものが生産されるか不安である。材質等の品質であれば専門機関の検査等で証明されるし、量的規格である長さや質量、容積等であれば専門家の管理下で可能であるが、機能的なものや使い勝手のようなものは、発注者側の立場でその道の専門家でなければ判断できないものがある。更に、生産物には風格や周囲の雰囲気の馴染み等、地域特性による文化や生活観にも関係するものもあり、これも広義の品質問題になっており、従来とは違う幅広い価値観を求められてきた。成熟化した市場経済で難しい問題はこの点であり、品質が従来のような材質や数量的規格だけが判断基準であった時代であれば、品質の評定は容易であったが、成熟化社会における施主の品質に対する深い想いは単純に伝えることが難しい。このような生産物を不特定多数の業者に、価格と単純な品質だけを条件とした競争は馴染まないのである。

2.法的な対応策について
 発注者(客側)の品質に関する不安感を解消するために、法的規定によっても発注者を支援する仕組みがある。ISOや品確法もその一つであり、発注者側が不利にならないように配慮されている。ISOについては、製造業界では、近年ISOの機能も進化し品質向上が適切に発揮できる仕組みが定着してきたが、建設業界では必ずしも適切な形で定着したとはいえない。ただ設備関係の業者にあっては、技術的な部分で現場作業の標準化が容易な業者はISOの馴染みがよく、成功事例が多く見られるようになったが、専門工事の大部分を外注するゼネコンにとっては、必ずしも成功しているとはいえない。なぜなら現場作業の品質管理までを下請企業に外注し、品質管理は直接担当していないからであり、間接的な品質管理の適切な手法が確立されていないからである。その意味でゼネコンにおけるISOが適切に機能するためには、少し時間がかかりそうである。品確法については、始まったばかりであり、この法律の狙いを定着させることが今後の課題である。

3.施工業者側における競走上の無理な因子が混入
 受注生産の課題は、生産物を生産する前の契約段階で、激しい競争原理が作用し、受注価額が不安定化する特色をもっている。建設市場における需給の状態にもよるが、過度に競争原理が作用する場合があり、価格が極端に低い価格で争いになる場合がある。そのため原価割れになることが想定されると、手抜き工事等の不適切な考えが脳裏を過ぎるのである。結果的に低価額化の現象は、品質劣悪化を招き発注者にとっても迷惑が及ぶ現象となってしまうのである。本来、市場経済とは交換経済をいうのであるから、双方が対等の立場で等価物の物件を交換することが正常な取引であり、双方共に公平でなければならないのである。片方に有利、不利が偏ってはいけないのであり、これが市場経済の公平公正の仕組みとなっている。しかるに過度な競争作用の環境下での競争入札では、公平公正の作用の働きが十分に機能しない因子が混入していると言わざるを得ないのである。

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