新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 08/7/20(日) 19:43:31
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1.日本的経営と労働環境の変化
日本的経営の特色は、基本に終身雇用制度と年功制度によって発展してきたもので、日本人の労働価値観とも馴染みがよく、政府の労働政策とも整合して発展してきた。年功型賃金制度は、年令給を基本にして、能力を功績として評価し多少の報酬を加味する制度であった。この制度であれば賃金格差が少なく、中流意識を好む日本人にとって日本的経営は最も馴染んだ経営法であった。しかし近年の市場経済は、グローバル化の現象によって、一国が独自の経営文化を維持することができなくなってきた。過去の市場経済は、国単位で強い規制がかかった市場経済であったから、国ごとに独自の市場経済を維持することができたが、グローバル化後の世界経済は、国情を超えた仕組みで動き出しており、隣国において能力主義が一般化すれば、他国も能力主義を導入せざるを得ない状況下になってしまった。能力主義になれば所得格差が起きるし、能力がなくても年令によって高い賃金を払う制度が通用しなくなったのである。これがグローバル化した市場経済の特色であり恐ろしさでもある。
2.賃金が固定化する恐ろしさ
年令で賃金を決めて終身雇用をすれば、賃金は固定化し売上の変動に馴染まない。働く人間にとって年令が増すごとに賃金が上がることは、生活が安定し将来の生活設計も立てることが出来ることで好ましいが、グローバル化した世界市場の仕組みの視点で見れば、終身雇用制度や年功制度は通用することが難しくなってきた。経営面からみれば、賃金が固定化し年令で増加する仕組みは、不景気な時代に入れば不気味であり恐怖である。売上が順調に右肩上がりであれば、年功型の賃金制度は維持できるのであるが、近年の地球規模の激しい競争社会では、売上の変動は避けることができない。そのため賃金の固定化が企業にとっては命取りになる。過去の世界情勢と異なるグローバル化現象の結果であるが、今日の世界市場の仕組みはサミットによっても簡単に変えることができないのであって、グローバル化現象は、地球規模の超競争市場を生み、能力主義、所得格差といった負の仕組みが増殖している。それを避ける方法が容易に見つかりそうもないのである。
3.建設業界の経営体質と受注制度
激変する市場経済時代に、受注産業である建設業界にとって売上の激変は、経営に大きな打撃を与えてしまうのであり、特に公共工事を受注する業者にとっては、技術者や技能者を多く抱えなければならないことは悩みの種である。高給取りの技術者や技能者を原則通年雇用していることが発注の条件のため、高額な人件費が固定化してしまう。この人件費を前提に経営が成り立つ仕組みは、売上が安定して受注できることと、一定率の利益が確保できなければならない。高給取りの有能な技術者を入札条件にすることは、決して悪いことばかりではない。有能な技術者や技能者を抱えている企業は、発注者から見れば品質に信頼できる適切な企業として判定でき、安心して発注できる業者とみることができるからである。しかしこのような技術や技能実績を重視すれば、指名競争入札や特命による発注となるのである。公共工事の発注条件がこのように市場経済に馴染まない側面があり、この点をどのように公共工事の入札に馴染ませるかが今後の大きな課題である。
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