<16>注文生産市場における総合評価方式について
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/9/14(日) 18:02:59  返信も含め全削除

1.注文生産市場の特殊性の証拠
 注文生産は、生産する前に売買契約を締結しなければならない取引のため、既製品生産市場と違い多くの不具合が発生する。航空機産業や造船業、建設業のような大型生産物の注文生産の業界から、小規模企業の町工場まで、注文生産の取引形態の業界では、種々雑多な不具合が日常的に発生している。それにもかかわらず、決定的な改善策が一向に見つからない。建設業界も同様であって不具合の連続である。建設業法の理念の一つに注文者保護の原則があり、施工業者は過去の工事経歴を公表することを義務付けられている。それは注文者が施工業者の過去の実績(工事規模や品質等)を確認できるようにするためである。更に業界の商慣習で請負契約と同時に建設費の3分の1(公共工事の場合40%)が前払いする慣例があり、金額が多額になることもあり、受注業者の財務内容まで行政機関で公表することが義務付けられている。このような法的規制自体が、注文生産市場の取引形態自体に特殊性があることを認めている証拠である。

2.総合評価方式について
 建設業界の主張の中に、一つとして同じ物は作らない。また品質や機能、品格といった内容を基本として競争するのであるから、ただ単純に価格競争だけでは取引が成立しない。そのため、発注者側が重視する条件を提示して、これも評価の対象とする方法が総合評価方式である。発注者からすれば品質や機能、品格を無視して価格競争だけで争われることは、意に反することであり、民間工事であれば、品質や機能、品格等の実績を重視し、信頼できる業者を特定してから、価額の交渉に入るのが通例となっている。いわゆる特命による随意契約である。この特命随契の内容に少し近づける方法として考案されたものが、総合評価方式である。

3.民衆の総合評価方式の反応
 総合評価の条件である内容について、適切な技術提案があれば、これらの内容を数値化して評価し、入札価格と合わせて落札を判定することについては異論が無いが、結果として高い金額で落札する結果となる場合がある。金額の競争については客観的評価であるが、総合評価の部分が主観的な評定になり、恣意性を嫌う民衆はこの点に疑義を感じている。民間工事においては、この総合評価部分の判断基準が重要であるため、一般競争入札にならずに特命随契になるのである。公共調達の難しい点がこの部分にあるのである。

4.業界の総合評価方式の反応
 総合評価方式を導入してからまだ日が浅いこともあって、業界関係者の評価は色々であるが、その中で気になる意見は、総合評価の技術提案や工事には自信があるのに、自分より高い金額で落札する仕組みは納得できない。割付の匂いがするという不満の声がある。単なる価格競争を嫌う建設業者が、総合評価で判断すれば、恣意性の匂いがするといって不満が増殖する。この不満は総合評価方式がもつ宿命であるが、この評価方式自体に問題があるのではなく、注文生産市場の特異性から発生する問題であって、注文生産市場システムのメカニズムにその大きな課題が潜んでいるのである。

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