新規投稿者 阿座上洋吉
投稿日 08/10/12(日) 17:21:30
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1.既製品市場においても奇妙な現象が起きる
既製品市場は,品質が確定したものを市場で売買し,取引が成立すると同時に現品の引渡しが行われるため,取引上の不具合は最小限に抑えられる。つまり注文生産のように,生産が完了した時点で品質が確定するものとは違い,既製品市場は大きな問題は発生しにくいのである。しかし既製品市場においても時として異変が発生する。近年の原油高騰の時代に奇妙な現象が発生した。ある公的機関において起きた問題である。その公的機関が使用する1年間分のガソリンを,一括して一般競争入札に付した時のことである。この落札金額が異常に高い金額で落札したのである。この取引は,一般競争入札のルールに従って最低金額の入札者が落札したもので,制度的には何ら問題はないのである。法的にも競争入札の正常なルールが機能しているにもかかわらず,落札金額が異常に高い金額で落札したのである。この現象はガソリン価格が高騰の最中のためで,今後いくら高騰するか分からない状況下であったからである。その公的機関全体の量をまとめた1年分の取引は,将来価格の予測が難しい時代であり,適切な判断ができないため,心情的な予測によって高額な札を入れざるを得なかったのである。
2.一般競争入札だから高くなる
通常の市場環境の中で競争することは,一般的には安めで落札するはずである。ところが原油高騰の最中のため,前述のとおり落札価格が異常に高額となってしまった。この取引を現物納入のつどその時の相場で購入システムであれば,不具合を起こさなかったはずである。民間の一般的なガソリンの納入の形態であれば,時の相場で継続的に納入する契約を結ぶ方式である。これを1年間まとめた量を一括して一般競争入札することで,1年先の高騰するかもしれない状況下では,その不安から異常な高額の落札金額になったのである。つまり一般競争入札をしたことが,最適な取引条件とはならなかった例である。本来,一般競争入札は,競争原理が作用するため,競争作用で購入者が有利になると思われているが,物件の性質や市場環境によっては,必ずしも適正に作用するとは限らないのである。
3.二つの市場概念にまたがる取引が混在する
一般競争入札が最も適する状況は,既製品売買の市場でその時点の相場で現品売買をすることである。それを価格変動期に,1年間の継続納入を一般競争方式で契約することは無謀である。将来引き渡す部分の取引は,先物売買市場で行われる取引と全く同じ状況下におかれるのである。つまり将来の先物市場の相場を予想しなければならないからである。先物売買市場は,通常の既製品売買市場とは別の市場であり,現実には既製品市場とは分離された特別の先物売買市場が用意されているのである。この別々の市場で売買するものを1年間まとめて,既製品市場で売買すること自体が,取引の困難性をまねいたのである。このように内容が異なる取引をする場合は,独立した専門の市場において行うべきである。その意味で注文生産市場においても,既製品市場と全く異質な形態の取引であるから,既製品市場とは別に分離した特別の市場概念が必要である。
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