<20>一般競争入札の不具合発生原因
新規投稿者 阿座上洋吉  投稿日 08/10/19(日) 21:36:12  返信も含め全削除

1.ソフト業界の事例
 IT化の発展と共にソフト業界が活躍している。このソフト業界は,商品化された既製品ソフト市場と,注文生産によるソフト市場に分かれるが,不具合の多くは注文生産市場において発生している。なぜなら注文生産市場では,生産前の段階で競争入札になるからである。この点でソフト業界と建設業界の悩みは類似している。完成したソフトの品質や機能等が確かなものであるかの判定は,引渡しを受けた時点でなければ判明しない。それを注文の時点で競争入札することは難しい。だれでもいいから安ければ安いほど良い,という不特定多数の中で行われる一般競争入札は,市場システムに無理がある。また,企業として既に使用しているソフトに,新規注文品のソフトを連結させて使用する場合は,新規ソフトとの間で発生したトラブルが,既存ソフトに起因するか新規ソフトかの判定が難しい場合もある。これをどちらの生産者が責任を負うか等,容易に解決できない場合があり,この点からも一般競争入札が馴染まないのである。

2.指名競争入札になる必然性
 不特定多数から選考する一般競争入札は,自由主義経済の大原則に合致するのであるが,注文生産の場合において,一般競争入札制度を採用すれば,発注者側の立場では業者の指名権が希薄化する。発注者にとっては,信頼できる業者を自分の裁量で指名したいと望むが,一般競争入札は業者の指名権を放棄する結果となる。一般競争入札は自由主義経済の原理に照らしてみれば,自由主義経済の原則的な入札形態であるが,この一般競争入札が最高のシステムであるとすれば,規制を受けない民間工事はすべて一般競争入札になるはずである。これが特命による随意契約の形態をとることが多い理由は何故であろうか。一般競争入札には大きな欠陥があると思われるのである。せめて発注者の指名権の行使として,信頼できる業者数社指名し,その中で競争原理を作用させる指名競争入札であれば,信頼のおける業者を選考して安心できるのではなかろうか。

3.一般競争入札の欠陥
 一般競争入札は,自由主義経済の原理論的には存在価値がある。しかし,自由主義経済の原理は,既製品売買市場として発展してきたものであって,注文生産市場においては不具合事件ばかりが目に付くのである。つまり市場経済の欠点であろう。既製品市場においても多少の不具合は発生するが,既製品市場においては,取引時点で現品チェックが行われるため,その後の取引上の不具合は極めて少ない。これに対して注文生産市場においては,生産中から生産完了後も不具合の連続である。この量的不具合の問題を解決するには,生産前の請負契約の段階を重視しなければ,不具合を解決する方法が見つからない。請負契約の段階で慎重な相手を探す方法を採用するとすれば,一般競争入札ではなく指名競争入札となってしまう。この指名競争入札を強調しすぎると規制緩和時代に合わないのである。グローバル化社会の規制緩和時代をどうするかの課題が残るのである。

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